Ride&Fish

2025-02-28

RIDE&FISHで自転車の街から楽しむエリアトラウト|前編


2月、季節はまだ冬である。前回の伊豆半島ではなかなか苦戦したこともあって、今回は釣れる釣りがしたい。そうなると、やっぱり管理釣り場のトラウトである。


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昨今はエリアトラウトという名称で大いに人気を博している管理釣り場のトラウトフィッシングだが、地域によってその数はさまざま。その中でもとりわけ盛んなのは、群馬・栃木を中心とした北関東エリアだ。その密集度たるや、他地域のアングラーからすれば垂涎の的。


冬に釣果が見込めて、RIDE&FISHとも好相性な釣り……それはエリアトラウト!


ところで、栃木には「自転車の街」がある。県庁所在地である宇都宮市だ。宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース(以下、ジャパンカップ)という国内最大の自転車ロードレースが毎年秋に開催され、全国から多くのファンが駆けつける。自転車ファンにとってはおなじみの街であり、僕ももう10年以上も毎年訪れている。が、実はあまりこの地域を自転車で走ったことがない。いつもレースの観戦に忙しくて、街をじっくり見ることがないのだ。


そこで今回は、「自転車の街」である宇都宮を出発して、「管理釣り場のメッカ」である栃木県でのRIDE&FISHを計画。自転車ライドも楽しみつつ、魚も釣ろうというコンタンだ。

***

RIDE&FISHには、地元に精通したガイドがいると心強い。今回は、宇都宮在住で自転車乗り、この数年は渓流のトラウトフィッシングにのめり込んでいるコーイチさんにアテンドをしてもらうことに。


宇都宮在住のコーイチさん(左)が今回のガイド役。宇都宮周辺の道を熟知している。春からは渓流や中禅寺湖に通うアングラーでもある。


そして今回の旅を撮影するフォトグラファーの川口近成さんは、なんと宇都宮ブリッツェンにも所属した元自転車選手。いやはや、これだけでも宇都宮の自転車濃度がわかるというもの。

コーイチさんが乗るスチールロードバイクは群馬のライジンワークス製。フレームバッグや大型サドルバッグ、ハンドルバーバッグを搭載したバイクパッキング仕様に、エリアトラウトの道具一式がすっぽりと収まっている。比較的装備が身軽にできるのも、この釣りならでは。自転車との相性が良いのである。


RIDE&FISH仕様のコーイチさんのライジン。バッグ類などのディティールは後編で!


宇都宮の市街地を抜けるとあっという間に田舎道に。東京や大阪のような大都市では延々と信号に捕まって前に進まないが、宇都宮にはそんな心配は不要のようだ。多くのプロ選手にとってもいい練習環境に違いない。

今回は管理釣り場までを最短で行くのではなく、途中でこの土地ならではの風景に出会えるよう、寄り道しながら楽しむルートをコーイチさんに引いてもらった。せっかくの小旅行だから、ライドも楽しまないともったいない。


「あそこが古賀志」と、ジャパンカップでもおなじみの名称が飛び出す。道路環境はよく走りやすい。自転車のプロ選手がこぞって住むのも納得がいく。(写真/小俣雄風太)


知らない風景の中を走るのは、なんと愉快なことだろう、としみじみ思っていると「あれが古賀志山」とコーイチさん。古賀志といえば、ジャパンカップで最大の勝負どころの登坂。その山を、今日は裏側から見ていることになんだか不思議な気持ちになりつつ、宇都宮にいることを実感する。

「石屋が多いでしょう。大谷は石が有名なんです」

とコーイチさん。宇都宮の北西部、大谷町へ入ると確かにそこかしこに石屋があり、切り出された石がごろごろと転がっている。大谷石は、旧帝国ホテル本館に用いられたことで知られる石で、建築家フランク・ロイド・ライトが惚れ込んだ建材なのだとか。


高さ27mの平和観音は大谷をいつも見守っている。(写真/小俣雄風太)


大谷石のエリアを走る。明るいクリーム色で、表面はざらざらとしている。


ダイナミックな岩稜が現れた。大谷石の石切場ということだが、そのスケール感に圧倒される。大きな観音様は観光名所となっていて、近くの道の駅ベルテラシェ大谷には、大谷石でできた建物も。ほんのりとベージュだったりピンクがかった色味が温かさを感じさせ、なるほど建材として支持されるのもわかる気がする。黒い斑点は「ミソ」と呼ばれ、大谷石ならではの特徴なのだとコーイチさんが教えてくれた。


ベルテラシェ大谷にある「旧大谷公会堂」は、解体した石材を再利用して昭和4年に建造された当時の姿に復元されている。明るい色合いに気品を感じる。


これが「ミソ」。大谷石に多く見られる特徴だという。


景色が開けた。牧歌的な農道と、奥に見えるは雪をいただいた男体山と日光連山。この時期だからこそ見られる風景。もうライドとしては満点である。


奥に見えるのは日光連山。雪を頂いて美しい。栃木を代表する男体山も見られた。


目指す管理釣り場が近づいてきたが、時刻はまもなく正午。ここまで20kmほどゆっくりと走ってきたが、釣りの前には腹ごしらえをしておきたい。ふらりと立ち寄った釣り場近くの食堂がこれまたいい雰囲気で、そして筆舌に尽くしがたいほどの美味であった。これは嬉しい出会い。釣りの前に士気がもう一段高まったのだった。


周囲に飲食店が少ない中で、美味しいローカルの食堂に行き会えた喜びといったら! この食事のためにまた来たい。


大芦川F&C フィールドビレッジ全景。画面奥側は好ポイントらしく人が密集していた。


今回の釣り場は「大芦川F&Cフィールドビレッジ」。渓流としても名高い大芦川のほとりにある管理釣り場で、地下水による水の美しさと魚の好コンディションが評判のエリアだ。平日の昼過ぎだというのに、大勢のアングラーが竿を振っている。この地のエリアトラウト熱がうかがえる。


普段は駐車場スペースに駐輪してほしいとのことだが、今回は特別に許可をいただき自転車を釣り場まで持ち込ませてもらった。バイクからパックロッドを取り出し組み立てていると、水面を魚が跳ねる音が聞こえてくる。どうやら魚の活性は高そうだ。


パックロッドを組み立てる、高ぶる瞬間。ライズの音が聞こえてきてソワソワしてしまう。


コーイチさんはシンキングミノーで、僕はクランクベイトからスタート。透明度の高さゆえ、魚影の濃さもよくわかる。テロテロとデッドスローでクランクを引いてくるが、魚は食ってこない。興味を示して追いかけてくる個体はいる。これぞエリアの釣り。ヒットルアーを探るべく、ルアーローテーションを開始する。


釣り開始! 今回は撮影用に特別に自転車を持ち込ませていただいた。


クランクの色を変え、サイズを変え、引き方を変え……。4-5投ごとにルアーチェンジを繰り返す。時折コツっとアタリがあるが、食ってきているのか、魚の群れに直撃しているのか判別がつかない。そろりそろりと引き続けていると。

グン!

のった! 小気味よいダッシュを見せて走るニジマスをいなして無事ネットイン。自転車でここまでやってきて釣った本日のファーストフィッシュ、いつもよりもなんだか嬉しい。さぁ、まだまだ釣るぞ。ボックスには使いたいルアーがたくさんあるのだ。


いつでも最初の一匹をキャッチした瞬間はすごく嬉しい!


(後編に続く) 

Text: 小俣雄風太
Photo: 川口近成